つらいときほど「内省」は危険 研究が示す心を癒す方法

つらいときほど「内省」は危険 研究が示す心を癒す方法

一般的に「内省」や「自分と向き合うこと」は、自己成長のために良いことだと考えられています。しかし、近年の多くの研究によって、その考えは必ずしも正しいわけではないことが示されています。特に、精神的に苦しい状況下においては、内省はかえって有害になることが明らかになってきました。

内省が呼び寄せる「内なる批判者」

つらく苦しいときの内省は、なぜ危険なのでしょうか。それは、私たちのパフォーマンスを下げ、正しい判断を妨げ、人間関係にまで悪影響を及ぼす可能性があるからです。さらに暴力性や攻撃性を高め、様々な精神疾患や体調不良のリスクを増大させることさえあるとのこと。

私たちは、自分の中のコーチに助けを求めようとして内省を始めます。しかし、実際に顔を覗かせるのは、自分を励ましてくれるコーチなどではなく、自分を厳しく責め立てる批判者なのです。

これは、おそらく多くの人が経験されていることでしょう。落ち込んでいるときに考えれば考えるほど、思考が悪い方向へ向かってしまう、というあの感覚です。

だからこそ、過去の痛みや未来の不安に囚われず、今この瞬間に集中すべきだ、といったようなアドバイスが存在します。しかし、このアドバイスは人間の生物学的な仕組みに反しているという主張があります。人間の脳は、常に「今」に集中し続けられるようには進化していません。脳は元来そういうふうにはできていないのです。この視点は、安易な精神論に流されないための重要な鍵となります。

緑豊かな自然は「心のビタミン」

では、内省に頼らず、つらい局面を乗り切るためにはどうすればいいのでしょうか。そのヒントは私たちの外側、つまり「環境」にあります。私たちの脳内会議は、日々を過ごす物理的な空間に大きく影響を受けている、という興味深いエビデンスが続々と発表されています。

まずは、環境心理学者のロジャー・ウルリッヒ氏の研究から。この研究では、胆嚢の手術を受けた患者を二つのグループに分けました。

  1. 病室の窓から緑の木々が見える患者
  2. 病室の窓からレンガの壁しか見えない患者

この二つを比較したところ、はっきりとした結果が表れました。緑の木々が見える患者は、レンガの壁しか見えない患者に比べて術後の回復が早く、鎮痛剤の使用量も少なかったとのことです。さらに、看護師の評価によると、気力の回復も早かったようです。

他の研究では、住居から緑が見える人は、殺風景な都市景観しか見えない人に比べて集中力がかなり高い傾向にあると報告されています。また、難しい決断を先延ばしにせず、困難な状況に直面しても悩まされる度合いが低いという結果も出ています。どうやら自然の緑は、私たちがより前向きに行動し、冷静に考え、果敢に問題に取り組む姿勢を支えてくれるようです。

緑がもたらす恩恵の数々

樹木や芝生は、いわば「心のビタミン」として働き、私たちのストレスへの対応力を高めてくれます。自然の緑に関する発見は、たくさんあります。

  • イギリスの18年間の追跡調査
    1万人以上を対象としたこの調査では、緑地の多い都市部に住む人ほど、不安感が低く幸福感が高いと回答する傾向が確認された。
  • カナダのトロント市の2015年の研究
    1ブロックあたり樹木が10本増えるだけで人々の健康状態は向上し、その効果は年収が1万ドル増えることや、7歳分の若返りに匹敵すると結論付けられた。
  • イギリスの約4100万人の生産年齢人口を対象とした調査
    身近なエリアに緑地があれば、貧困が健康に及ぼす悪影響の一部が緩和されることがわかった。
  • 90万人以上を対象とした研究
    衛生画像を利用した分析により、子供の頃に緑との接触が最も少なかった人は、成人してから鬱病や不安症を発症するリスクが15~55%高いことが判明した。

これらの研究結果は、なんとなく自然は身体に良いという漠然としたイメージを、具体的な事実という認識に変えてくれます。自然の緑は優秀なセラピストであり、老化を防ぐ薬でもあり、そして免疫力を高める活性剤という役割も担ってくれるようです。

仮想の自然もまた「本物の自然」

都市部での生活や多忙な仕事、病気や高齢といった理由で物理的に自然に触れるのが難しい人もいるでしょう。ところが、心の「緑化」は実際に自然に囲まれていなくても可能なようです。

写真やビデオを通して自然に触れるといった二次的な体験でも、注意力を回復させる効果があるそうです。人間の心にとっては、仮想の自然もまた「本物の自然」なのかもしれません。

心を整える鍵は「自分」というよりは「環境」にある

これらの知見は、私たちに重要な視点を与えてくれます。個人の心の問題を「その人の精神力」だけに帰結させるのではなく「環境がいかに心に影響を与えるか」を考慮する必要があるのです。

つらく苦しいときは、あまり自分の内面を掘り下げてはいけません。意識を向けるべきは外の自然のほうで、それには科学的根拠があります。メンタルヘルスが大きな問題となっている現代において、このことは多くの人に知ってもらいたいと思いました。

Kenta

1992年生まれ、兵庫県在住。本業は個人事業主で、小規模団体の会計請負事業をやっています。ニュースや書籍を読むことが大好きなので、それらで得られた生き方に役立つであろう情報を皆さんとシェアできればと思います。

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