「Time is money」の罠 過度な効率追求がもたらす判断力と創造性の低下

「Time is money」の罠 過度な効率追求がもたらす判断力と創造性の低下

近年の研究によると、仕事の効率は、意識しすぎるとかえって成果が低下する場合があるということが分かってきました。

その背景には、大きく分けて2つの理由があります。

1つ目は、短い時間に複数のタスクを効率的にこなそうとすると、重要な事項に手が回らなかったり、無理な依頼を引き受けてしまうなど、判断力が低下する傾向があるということ。行動科学の分野では、この現象は「トンネリング」と呼ばれます。

経済学者センディル・ムッライナタン氏らの研究では、人はトンネリング状態に陥ると平均してIQが13ポイント下がると報告されています。この低下率は、一晩徹夜したときの影響に匹敵します。

2つ目は、時間効率を過度に追い求めると、創造性も損なわれるという問題。

時間に敏感になることで、人は斬新なアイデアが生まれにくくなり、問題解決能力も低下する傾向があるようです。

ハーバード大学の心理学者テレサ・アマビール氏は、7社から177名の従業員に業務日誌を記入させ、約9,000日分のデータをもとに働き方を分析しました。すると、仕事中に時間を強く意識していた日は、そうでない日と比べて創造的な思考の発現率が45%低下し、プロジェクトの成果も劣っていることが分かりました。

さらに、この創造性の低下は2〜3日間続くものの、多くの従業員はその変化に気付いていなかったといいます。効率化に固執すると、新たな効率化のアイデアすら生まれにくくなる恐れがあるのです。

歴史的に見ると、人類が時間の最適化に強くこだわるようになったのは、18世紀頃のこと。イギリスでの産業革命により、資本家は工場に何百人もの労働者を同時に集め、同一のタイミングで作業を行わせる必要が生じました。その結果、多くの時計に秒針が取り付けられ、労働者の時間はかつてないほど細かく管理されるようになりました。

ベンジャミン・フランクリン氏の「Time is money(時は金なり)」という言葉が広まったのもこの時期で、この時代が時間と金銭を同一視する考え方の始まりと言えそうです。

19世紀初頭には、時間の無駄遣いが金銭の浪費とみなされるようになり、多くの歴史家は、人々が時間に値札を付けるようになったことが現代の働き方に影響を及ぼしていると指摘します。時給1000円や残業代1250円といった報酬体系があると、雇用主は従業員の時間を最大限に活用しようとするのは当然の流れです。

20世紀初頭に、経営学者フレデリック・テイラー氏がタスクを細かく分類し、それぞれの所要時間を計測することで生産効率が向上すると提案して以降、現代のいわゆる時間管理術の考え方が広まってきました。

もともと時間の概念そのものは古代エジプトやバビロニアの時代から存在していたものの、当時は作物の収穫や灌漑のタイミングを大まかに把握するために用いられていただけで、現在のように厳密な管理が行われていたわけではありません。

機械式の時計が初めて登場したのは13世紀のヨーロッパ。その後約400年間は分針や秒針は発明されず、現代のように時間に追われる感覚はあまりなかったといいます。歴史学者エドワード・P・トンプソン氏は、産業革命以前の時計はそれほど意味を持たなかったと言っています。

効率化を追求することにもメリットはありますが、過度にこだわるようになると判断力や創造性は低下し、結果として仕事の成果も大きく下がる可能性があることを、私たちは知っておく必要があります。

参考書籍
『YOUR TIME ユア・タイム: 4063の科学データで導き出した、あなたの人生を変える最後の時間術』鈴木祐(河出書房新社)

Kenta

1992年生まれ、兵庫県在住。本業は個人事業主で、小規模団体の会計請負事業をやっています。ニュースや書籍を読むことが大好きなので、それらで得られた生き方に役立つであろう情報を皆さんとシェアできればと思います。

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