あるデータによると、個人の投資判断は、その人の生まれた時期や場所によって大方決まることが示唆されています。
今まで一般的に「人々は、それぞれの経済的な目標や投資対象の特徴を加味して投資の判断を行っている」と考えられてきました。しかし、実は意外とそうでもないようです。
2006年に、経済学者のウルリケ・マルメンディエ氏とステファン・ナーゲル氏は、アメリカ人の消費者金融調査50年間分のデータを分析しました。この分析の結果から、人々の投資判断は、その個人の人生経験に大きな影響を受けていることが明らかになりました。
たとえば、高インフレ時代で育った人には、その後の人生で債券に対して投資する金額が極端に少ないという特徴がありました。
債券には、預金と同様、インフレに弱いという性質があります。
- 国内で流通している通貨がインフレ状態になると、通常はその国の中央銀行が金融政策として利上げを行う。政策金利が上がれば債券の市場価格は下がり、政策金利が下がれば債券の市場価格は上がる。
- 債券のリターンの大部分を占める金利収入の利回りは、インフレ率を下回ることが多い。
- 保有債券が満期を迎えて額面金額が返還されたとき、購入時よりインフレが進行していれば、その進行分だけ金額は目減りしていることになる。
次に、好調な株式市場の時代に育った人は、株式に多く投資する特徴が見られました。個人投資家のリスク許容度も、過去の人生経験に大きく左右されます。
知性や金融教育といった要素よりも、生まれた時期や場所という要素のほうが、多くの人にとっては影響が大きいのでしょう。
個人的な経験は、世界の出来事のほんのわずかでしかありません。しかし、それが私たちの考え方の大部分を占めています。
そのために、たとえ同じ知的レベルの人であっても、投資方法やお金に対する優先事項、リスク許容度などについては、意見が大きく分かれるのです。
大恐慌で全財産を失った人の体験談を読んでも、実際に経験した人と同じ心の傷を負うことはできません。逆に、実際に大恐慌を経験した人は、株式で資産を保有している人の気持ちを全く理解できないかもしれません。
私たちはそれぞれが異なる経験に基づいて、全く違った視点で世界を見ているのです。