実は意外と重要な誕生月
日本で子育てをする際、自分の子どもの学力や運動能力を高確率で高めることができる、ある産み方が存在する、といったら皆さんは信じられますでしょうか。
それは「子どもを4月に産む」ことです。
厚生労働省の人口統計データを見てみると、近年の日本の出生数は大幅な減少傾向にあるので、月別の出生数にはある程度の偏りが生じるようになってきました。しかし、第2次ベビーブームを含む1970年以降から2000年までの間に生まれた、現在の主要納税者である世代の中では、月別の出生率には差がほとんどないことが示されています。
にもかかわらず、年度の最初のほうに生まれた人と最後のほうに生まれた人との間には、運動面と勉強面における不自然とも思える様々な差が表れたデータがいくつか存在するのです。
運動面と勉強面で見られる誕生月による差
まずは運動面から。
日本のプロ野球12球団に所属する選手全体の中で、4月〜6月生まれの選手の割合は約31%ですが、1月〜3月生まれの選手は約16%となっています(外国人選手は除く)。
次に、サッカーのJリーグでは、J1の18クラブに所属する選手の中で、4月〜6月生まれの割合は約33%、1月〜3月生まれは野球と同じく約16%です。
つまり、野球とサッカーという大人気スポーツで、トップ層にいるプロ選手の4月〜6月生まれと1月〜3月生まれの人数差は約2倍にも及びます。
月によって出生率に大きな偏りはない、というデータを考慮すると、それぞれ25%に近づくのが自然であり、この人数差は何かしらの理由があるといわざるを得ません。
次は勉強面です。
一橋大学の川口大司准教授が、国際学力テスト「国際数学・理科教育動向調査」の結果を分析したところ、4月〜6月生まれの子どもの成績は他の時期に生まれた子よりも相対的に高い、ということが分かりました。
さらに、日本の小学4年生と中学2年生の、数学と理科の平均偏差値を生まれた月ごとに算出すると、4月から順を追って3月まで、グラフにして平均偏差値は右肩下がりに落ちていくことも分かりました。
4月~6月生まれと、1月~3月生まれの平均偏差値とでは、5~7ほどの差が見受けられたそうです。偏差値が5~7違うというのは、学校のランクが一段階変化するレベルです。学歴に影響を与える可能性が十分にあるので、その後の人生もきっと変わってくるのではないでしょうか。
小学校低学年の時期における11か月間の影響力
たとえば、小学1年生の場合で考えてみると、1年生は7歳ですから4月生まれの子は12か月×7で、84か月間の成長と学習を経験しています。
しかし、3月生まれの子は4月生まれの子より11か月遅く生まれていますので、84か月-11か月で、73ヶ月間の人生経験しかありません。
人生の経験値差を割合にすると、約13%も開きがあります。小学校低学年であれば、4月生まれと3月生まれの子の間で、学力と運動能力に差が生じるのは感覚的にも理解できます。
ですが、前に示した川口准教授の研究の通り、中学2年生でも4月生まれと3月生まれで差は生じています。中学2年生は14歳ですので、人生経験値は4月生まれであれば168か月間、3月生まれであれば157か月間となり、その割合の差は約7%でしかありません。
人生経験値7%の差で平均偏差値が5~7も違ってくるというのは、なにか他の要因も作用しているのではないかと考えたくなります。
関係が疑われる「マタイ効果」
アメリカの社会学者であるロバート・キング・マートン氏が提唱した「マタイ効果」というのがあります。マタイ効果の内容は「環境に恵まれた研究者は、優れた業績をあげることによって、さらに良い環境を手に入れる」というもの。
これは科学の世界のみならず、いろいろな分野の世界で見られる一般的な現象です。4月生まれと3月生まれの差にも、このマタイ効果の関与を指摘する意見があります。
初期段階で好循環に入れた子の優位性
一般的な子どもたちは、小学校に入学することによって、本格的に知的な学習を開始します。そして、同世代の子たちが属する集団の中で、良い意味も悪い意味も含めた様々なコミュニケーションを経て、自分の性格を形成していきます。
物事は一度サイクルができてしまうと、その流れから抜け出るのには多大な労力を要します。おそらく、子どもたちにとって一番最初の大きなサイクルは小学校生活でしょう。
このサイクルを形作る出発点を、他の子よりも有利な状況でスタートできればどうでしょうか。不利な状況でスタートした子と比較した場合、その先の活動はきっと楽しく感じ、前向きな性格になっていく確率が上がると思います。
スポーツチームに所属する場合も、最初に良い成績をおさめてレギュラー入りができると、質の高い練習機会をたくさん得ることになります。小学校生活は6年間もありますし、多くの人にとって勉強への向き合い方のベースが出来上がる時期です。
もちろん、高校生時代などに一念発起して一流大学へ入学したり、何かを始めて人生を好転させる例はたくさんありますが、やはりそれは一般的とはいえません。基本的に、そのままのサイクルで人生を進めていく人のほうが多数派です。
こういったことを考えると、これから出産・育児を検討している夫婦にとって、計画立てて出産時期を4月に調整する、というのも人によっては重要視すべきことなのかもしれません。
参考文献
『武器になる哲学 人生を生き抜くための哲学・思想のキーコンセプト50』山口周(KADOKAWA)